※文、パパ
※写真:AYA
僕は少年の頃からの夢を現実して、今アジア一美しい車窓と言われる列車に揺られている。
僕はテレビ朝日の「世界の車窓」シリーズが大好きだった。まだ海外に出た事がなかった頃、いつか世界中の車窓を眺め旅をしたいと思っていた。もう20年越しの夢になるだろうか。
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旅はもう一年以上続いている、その間にも沢山の列車に乗ってきたけど、じつはこの日まで心が揺れ動くほどの車窓には出会っていなかった。
僕らの旅はいつも自由気まま。道は何処かで必ず繋がっているから、風の吹く方向に歩いて行けば、美しい車窓にだっていつか必ず出会えるはず。そんなのんきな考えで旅を続けてきたから、今まで一年以上も出会えなかったんだ。
僕らは決して追いかけないで、向こうからやってくる風景を楽しむ。それが一番自然体だし、美しい風景に巡り合える秘訣だと思っているから。
スリランカニゴンボに到着した翌日、街でかなりねんきの入ったローカルバスが目に飛び込んできた。アジア諸国のバスは星の数ほど乗ってきたけど、このバスは最高にかっこよかった。1メートル先の視界も遮られるほどの真黒な黒煙を吹かしながら、10㎝先の隣の人の会話が聞こえないほどの爆音を鳴らし、窓全開でぶっ飛ばしている。
バンパーももげ落ちて、そこらじゅうがボコボコに凹んでいて穴だらけ。元の色が何色なのかもわからないほど錆が侵食していてるクレイジーなバスだった。
バスの中はどうかというと、タンバリン片手に歌ってる人もいれば、スピーカー持参でレゲーミュージックを爆音で鳴らし叫んでいる若者なんかもいる、「ザ・自由」の世界が広がっているわけで。
乗り物好きの僕の心を激しく刺激してくれた。
そんなバスを眺めながら街を歩いていると、次に目に飛び込んできたのが今回乗ったスリランカ鉄道だった。
クレイジーバスの背後に鉄道駅と列車が重なった時、違和感はゼロだった。その風景は異様なほどにバランスが取れていて、何とも言えないレトロスリランカの世界を作り上げている。
そして通り過ぎて行く列車から沢山の人たちが僕らに手を振っている。「早くこの列車に乗りにおいで」といわんばかりに。
運命的な出会いだった。この列車は僕らに素晴らしい風景を見せてくれるに間違いない。そう確信した。
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早速僕らはスリランカ鉄道に乗り込んだ。そして足早にバックパックを席に放り投げ、窓を全開にして体を乗り出した。
そこには列車の乗り入れ口や車窓から多くの人が身を乗り出し、過ぎ去っていく駅を眺めている人たちが見える。列車は徐々に加速し、心地よいビートを刻みだした。頬に感じる風が最高に気持ちよかった。
街を抜け、山を越え、草原を抜け。車窓から目に飛び込んでくる風景は、間違いなくアジア一美しいと思った。
広大な茶畑から僕らに笑顔で手を振る人たちの姿は忘れられない。
風景に感動しながら、外を眺めていると、隣に座るスリランカファミリーと何やら嫁たちが話をしている事に気づいた。
わずか数時間の列車の中で出会って、少しだけ仲良くなった。そして小さな村の小さな駅で彼らは手を振って下車していった。
出会いと別れの繰り返しが、ちょっぴり切ないけど、これが列車の旅というものだ。
いつかまたこの地に戻ってきたい。強くそう思った。
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僕らの鉄道の旅は、その日から10日間続いた。列車に揺られていた時間、12時間。途中下車した街、4駅。
スリランカ鉄道から見た車窓の風景は生涯忘れる事が無いだろう。
….
おわり
※写真:yuiが走っている列車の乗り口に腰かけている。
動画
僕らの辿った路線
ニコンボからキャンディー3時間。キャンディーに3泊滞在。キャンディーからヌワラエリア(ナーヌ・オヤ)3時間。3泊滞在。
アジア一美しいと言われるコース、ヌワラエリアからハプタレー2時間。3泊滞在。
ハプタレーからクレイジーバスで3時間。ヤーラ国立公園。